もめ事があったときに裁判を起こすよりも、仲裁人を立てて当事者同士の話し合いで解決できれば、互いにしこりを残すことも少なくなりますし、費用や期間も少なくて済むでしょう。 |
裁判によらず紛争を解決するための手続を 「裁判外紛争解決手続」 英語でAlternative Dispute Resolution - ADR - といいます。 |
境界ADRでは、土地の筆界の専門家である土地家屋調査士と、法律の専門家である弁護士をメンバーとした民間型境界紛争処理機関が、境界問題を筆界・所有権界の両面からとらえて調停を目指します。 |
当事者同士の協議によって調停を進めるので、調停にどうしても参加してくれない当事者がいる場合は不成立となります。調停が成立した場合、調停にかかる費用は両側の土地の所有者両方で負担しますが、 その割合は協議で決めます。費用・期間ともに訴訟よりも少なくて済みます。 |
筆界特定制度は土地所有者等の申請により、土地の筆界を筆界調査委員(土地家屋調査士のうち認定を受けた者)の意見を踏まえて登記所の筆界特定登記官が特定する制度です。 |
筆界特定制度はADRの一種でありますが、当事者の調停によって筆界を特定するものではなく、登記所所有の資料や現地の状況など各種の客観的資料をもとに筆界を特定します。 この制度で筆界が特定されると筆界特定書が作成され、土地の登記簿には筆界特定がされた旨の記録がされます。筆界特定書は登記所に保管され、手数料を払えば誰でも写しをもらうことができます。 |
また、所有権界についての特定は目的としません。もし所有権界のみの特定を目的として筆界特定の申請を行ったと判断された場合は料金を払い込んだ後でも申請が却下されます。(不登法132条) |
申請から筆界特定までの期間はおおむね6ヶ月以内を目標としています。また費用も訴訟より少なくて済みます。 |
費用は申請人が負担します(不登法146条)。もし境界線の片側の土地の所有者だけで申請する場合は、その人が費用を全て負担します。 |
申請は土地家屋調査士、弁護士、司法書士(申請者が受ける利益が140万円以下の場合)が代理することができます。 |
この制度によって特定された筆界に不満がある時に、当事者が境界確定訴訟を起こすこともできます。筆界特定登記官が特定した筆界と裁判で確定した筆界が異なる場合は 判決のほうが効力を持ちます(不登法148条)。もっとも、筆界特定登記官は入手しうる限りの資料を基に筆界を特定しますし、この資料は裁判にも用いるので、特定された筆界が覆ることはほとんど考えられないでしょう。 |